前の1件 | -
昔は何もなかった街と、教会 [見ておくもの]
雨は上がっていた。
風が、時折、木々にしがみ付く雨の雫を落とすだけだった。
街は、洗車されたように、ぴかぴかだった。
アスファルトは、新品のように黒々としていて、
そこに真っ白なラインが気持ちよく、伸びていた。
教会では何かが催されているのか、クリスマスのような電飾で彩られていた。
俺たちは、そんな風景に見蕩れながら、ゆっくりゆっくりと自転車を漕いだ。
俺たちがこの街に来たころ、まだここは何もなかった。
見渡す限り、建設中のビルか、ぴょこぴょこ草の生えた広大な空き地だった。
十二年間の間に、マンションがうわっと立ち並び、商業施設ができ、
埃っぽかった道路の一本一本に、まるで童話のような通りの名前がついた。
そして、教会は古い方が好きなのだが、教会もできた。
俺たちは、この街の始めからを知っていた。
そして、ここは俺たちの本籍地にした街でもある。
考えてみれば、この街に来たころ、俺たちはカーテンも持っていなかった。
この街と一緒に、俺たちも、俺たちの人生を作ってきた。
きっと、俺たちのなかにも、教会はあるのだろう。
或いは、朽ち果てていた教会を、取り戻したのだろう。
「日常生活~童話の始まる場所~」に出てきた、あの教会のように、
神父でも、牧師でも、ラビでもないおじさんが、
守ってくれているのかもしれない。
しかし、今日は「水難の相」が出ている。
余計なことしていると、また余計なことになりそうだった。
しかし、そのまま帰るのも、勿体無かった。
雨に濡れた街が、ぴかぴかしていてとても綺麗なのだ。
雨のときしか見れない風景だった。
いつも立ち寄る陸橋で、電車を眺めて、車両の数を数えた。
ここは色んな路線が通っていて、(上下四本。八本のレール)
波の満ち干きを見ているように、心が引き寄せられる。
8両編成の電車は見慣れているが、16両も引き摺っている電車があった。
「二階建てのもあるよ」
「かわいそうに、大宮に行くそうだよ」
「かわいそう…」
そんな埼玉県人には聞かせたくない同情をしながら、最スタート。
路面が濡れているから、気をつけなければならない。
節電で電気が消えているから、木や建物の陰を通るとき、よく見えない。
振り返って横浜の街を見ると、やはり節電で、
暗く沈みこみ、まるで死んでしまった街のように見えた。2011.8.24
イラスト:ゆうきみも
有城見萌日記「9/30 今、歩いている道」
(有城佳音Crack更新 「私、うまく死ねなくって」)text&illustration copyright (c)2011 B-factory12
風が、時折、木々にしがみ付く雨の雫を落とすだけだった。
街は、洗車されたように、ぴかぴかだった。
アスファルトは、新品のように黒々としていて、
そこに真っ白なラインが気持ちよく、伸びていた。
教会では何かが催されているのか、クリスマスのような電飾で彩られていた。
俺たちは、そんな風景に見蕩れながら、ゆっくりゆっくりと自転車を漕いだ。
俺たちがこの街に来たころ、まだここは何もなかった。
見渡す限り、建設中のビルか、ぴょこぴょこ草の生えた広大な空き地だった。
十二年間の間に、マンションがうわっと立ち並び、商業施設ができ、
埃っぽかった道路の一本一本に、まるで童話のような通りの名前がついた。
そして、教会は古い方が好きなのだが、教会もできた。
俺たちは、この街の始めからを知っていた。
そして、ここは俺たちの本籍地にした街でもある。
考えてみれば、この街に来たころ、俺たちはカーテンも持っていなかった。
この街と一緒に、俺たちも、俺たちの人生を作ってきた。
きっと、俺たちのなかにも、教会はあるのだろう。
或いは、朽ち果てていた教会を、取り戻したのだろう。
「日常生活~童話の始まる場所~」に出てきた、あの教会のように、
神父でも、牧師でも、ラビでもないおじさんが、
守ってくれているのかもしれない。
しかし、今日は「水難の相」が出ている。
余計なことしていると、また余計なことになりそうだった。
しかし、そのまま帰るのも、勿体無かった。
雨に濡れた街が、ぴかぴかしていてとても綺麗なのだ。
雨のときしか見れない風景だった。
いつも立ち寄る陸橋で、電車を眺めて、車両の数を数えた。
ここは色んな路線が通っていて、(上下四本。八本のレール)
波の満ち干きを見ているように、心が引き寄せられる。
8両編成の電車は見慣れているが、16両も引き摺っている電車があった。
「二階建てのもあるよ」
「かわいそうに、大宮に行くそうだよ」
「かわいそう…」
そんな埼玉県人には聞かせたくない同情をしながら、最スタート。
路面が濡れているから、気をつけなければならない。
節電で電気が消えているから、木や建物の陰を通るとき、よく見えない。
振り返って横浜の街を見ると、やはり節電で、
暗く沈みこみ、まるで死んでしまった街のように見えた。2011.8.24
イラスト:ゆうきみも有城見萌日記「9/30 今、歩いている道」
(有城佳音Crack更新 「私、うまく死ねなくって」)
タグ:混乱する季節を移動する
前の1件 | -










